こんにちは。高円寺の税理士「大勝税理士事務所」です。
老後資金の準備として、今や会社員、公務員、フリーランスの方々にとって必須の制度となったiDeCo(個人型確定拠出年金)。その最大の魅力は、他にはない強力な「節税メリット」にあります。
しかし、「なんとなく」で加入したり、制度改正の情報を逃したりすると、将来の受取時に思わぬ税負担が生じるリスクがあります。
今回は、iDeCoの3大税制優遇を再確認するとともに、最新の改正点、そして最も複雑で重要な「出口戦略」について、税理士の視点から深掘りして解説します。
1. iDeCoの「節税」3大メリットを再確認
iDeCoが「最強の年金制度」と呼ばれるゆえんは、その強力な税制優遇にあります。あまり節税を強調するのは個人的によくないと思っていますが、国のホームページに堂々と「節税」と記載があるので、節税について記載します。
メリット①:拠出時(掛金支払時)の全額所得控除
iDeCoの最大の魅力は、毎月支払った掛金の全額が所得控除の対象となる点です。
例えば、毎月2万円(年間24万円)を拠出する方が、所得税率10%、住民税率10%だとすると、毎年24 万円× (10% + 10%) = 4.8万円の税金が軽減されます。これが加入期間中、毎年続くのです。
年収や働き方によって拠出限度額が異なりますので、ご自身の最大の控除枠を使い切ることが節税の基本です。
メリット②:運用益が非課税(タックスフリー)
通常、投資信託などの金融商品を運用して利益が出た場合、その利益に対して約20%の税金(所得税・住民税)が課税されます。
しかし、iDeCoの口座内での運用益は全額非課税です。非課税で再投資されるため、複利効果を最大限に享受でき、資産増加のスピードが格段に上がります。これはNISAと同様の強力なメリットです。
メリット③:受取時に「大きな控除」が適用される
将来、積み立てた資産を受け取る際にも、一時金・年金いずれの形式を選んでも、大きな税制上の優遇措置が用意されています。
一時金で受け取る場合:「退職所得控除」が適用されます。
年金で受け取る場合:「公的年金等控除」が適用されます。
この「出口戦略」こそが、iDeCoで最終的に手取り額を最大化するための最重要ポイントです。(詳しくは後述します。)
2. 最新の制度変更
iDeCoは進化し続けています。決定している改正は、長期的な資産形成戦略に影響を与えます。
✅企業型DCとの拠出限度額一本化
これまで、企業型DC(確定拠出年金)に加入している方のiDeCoの拠出可能額は、企業型DCの規約によって大きく制限されていました。
しかし、2024年12月以降、企業型DCの掛金とiDeCoの掛金とを合わせた合計額で、拠出限度額を判定する方式に一本化されました。
これにより、これまで企業型DCの規約でiDeCoの拠出が難しかった方も、より広い範囲でiDeCoへの拠出が可能になりました。ご自身の企業のDC規約と合わせて、拠出枠を再確認しましょう。
✅加入可能年齢のさらなる引き上げ
iDeCoの加入可能年齢は、すでに60歳未満から65歳未満へと引き上げられています。
しかし、人生100年時代、働く期間の長期化を背景に、さらなる70歳未満への引き上げが決まっています。長く働くほど、長く非課税で積み立てる期間が持てます。
令和9(2027)年の控除分からの実現を目指して、準備を進めることとしています。
✅拠出限度額の拡充
「老後の資産形成は自助努力」という国の流れから、iDeCoやNISAといった優遇制度の拡充は国策です。
月々の拠出限度額の引き上げが決まっています。現行制度の制約で拠出を諦めていた方は、制度が有利になった際にすぐに活用できるよう準備しておきましょう。
令和9(2027)年の控除分からの実現を目指して、準備を進めることとしています。
3. 最も重要で複雑な「出口戦略」の税金対策
iDeCoで最も複雑で、税理士への相談が必要になるのが「受取時」の税金です。
特に一時金で受け取る際の退職所得控除と、会社の退職金との関係を理解することが極めて重要です。
🚨最大の落とし穴!「退職金の受け取り時期」に要注意
一時金として受け取るiDeCoは「退職所得」として扱われます。退職所得には非常に有利な「退職所得控除」が適用されます。
しかし、この退職所得控除の枠は、会社の退職金とiDeCoの一時金で奪い合いになります。
原則: 会社の退職金とiDeCoの一時金を同一年に受け取ると、iDeCoの勤続年数(加入期間)と会社の勤続年数に重複期間がある場合、控除枠が重複期間分圧縮され、税金が想定より高くなる可能性があります。
対策: iDeCoの受け取りを、会社の退職金を受け取る「前年」、または「翌年以降」にずらすことで、それぞれの控除枠を最大限に活用できる可能性があります。
年金受取か?一時金受取か?
一時金退職所得税負担が最も軽くなる可能性が高いです。会社の退職金との受取時期の調整が必須ですが、数年間にわたって、毎年非課税枠(公的年金等控除)を使えます。ただし、受け取る期間、公的年金や他の年金と合算され、課税されるリスクもあります。
ご自身の公的年金の受給額、他の個人年金や企業年金などを総合的に勘案し、最適な受取方法とタイミングをシミュレーションすることが必須です。
まとめ:iDeCoは「税金のタイムマネジメント」です
iDeCoはただの積み立てではなく、長期にわたる税金のタイムマネジメントそのものです。
拠出時、運用時、そして最も重要な受取時の3段階全てで税制優遇を受けるには、単に掛金を払うだけでなく、制度の改正動向を把握し、ライフイベントに合わせて「出口」の計画を立てることが不可欠です。
特に退職金制度は複雑なため、転職や退職を控えている方、資産形成の総点検をしたい方は、一度税の専門家にご相談ください。最適な受取戦略を立てることで、手取り額を最大化することができます。
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